【 桜、さくら、サクラ 】
湘南T−SITEのそばに、長久保公園という植物園があります。
多種多様な植物が植えてあり、
日本庭園の生け垣見本で作られた草花迷路や、
金閣寺竹垣などがそっとあしらわれ、
地味にすごく味わい深い公園です。
そこの真ん中の、桜の園。
ここに集う人たちの、穏やかな空気。
誰もここで、宴会してないのですね。
ただただ、
子供達が花びらを巻き上げて走り回り、
大人達がしみじみ、桜を見上げている。
この場にいる人たちみんなが、
それぞれの幸せをそっと、味わっている。
すごく素敵。
早川孝太郎という民俗学者が、
『さの神』という八百万の神を論じておられるそうです。
『さ音』の神聖視。
それについて、西岡秀雄氏が書かれた本があります。
『なぜ、日本人は桜の下で酒を飲みたくなるのか?』
古来の日本では、『さの神』さまをお祀りしていた風習がある、と。
桜、さくらは、
『さの神』が、『座/くら』される場所。
なんとなく、すごくすごく、わかる気がします。
坂口安吾の、『桜の森の満開の下』。
あの小説が、震えるくらいに好きです。
女が鬼となり、ぞぶりぞぶりと頭をすする描写も、
粗野で乱雑な山賊が、桜にとても繊細な感覚を持っているのも。
桜の下で、
人がふっと孤独に想いを馳せるのは。
桜が散っていくさまを、
まざまざと見せられているかだと思うのです。
この世のものは、永遠ではない。
すべて。すべて。すべて。
だからこそ、美しい。
すべて。すべて。すべて。
そう、響かせながら、桜が舞い散るのです。
だから孤独も、幸せも、
桜の下では浮き上がってくるのだと思います。
桜の森の向こうに、江ノ島。
季節は、移ろいでいきます。
Namaste.